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月夜にこんがらがって

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春とは

春とは。
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春とはなんだ?
以前、真夜中に唐突に尋ねられた。
何の事やらよく判らない。が、昔からよくそういう事を聞いてくる。

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           雪は溶け、全てが許しを得る季節。
           風が止まり、暖かな雨が降る季節。
         
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         澄んだ空が、にわかに混ざりゆく季節。

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               華が咲き、散りゆく季節。

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どうだ?

夜中でこちらも酔っぱらっていたので、調子に乗ってそう返信した。

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もうすぐはるがやってきますよ。
それまで、さむさにまけずにげんきにあそんでください。

                  はるのかみさまより

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つい最近たくさんの子供たちといっしょに聞いた、かみさまからのお知らせ。
気の早いカエルをもう2匹もみた。
# by meke1008 | 2012-03-07 15:36

いざさらば

年一回、年明け、一月、最終土日、と言えば僕ら大学時代の友人たちの間では「男だらけの温泉旅行」と決まっている。女房子供は質に入れ、男らしくいかなる仕事も蹴り倒し公私共々、皆様になんとか平謝りをしてスケジュール調整して頂き、後ろ髪ひかれる思いで参加の決意を固める事になる。
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フルメンバーとなると最大十三、四名。これは当然、その昔某在京放送局で制作されていた「女だらけの水泳大会」をもじったもので僕らの学部の殆どが男であった為、同志達との新年会となると必然的にこのようなとても悲しい楽しい旅行が企画される。早いものでもう十一回目となった。いざさらば_a0181097_1623752.jpg











「男だらけ」であるので恥も外聞もナシ。朝から酒に溺れ、家族連れやカップルが多く訪れる観光施設に出向いてはおっさん一行奇異の目で見られ、大した目的もないまま無駄に歩き廻り、宿泊施設に屋外プールなどあろうものなら罰ゲームと称して氷のように冷たい真冬の水の中を泳がされ、騙されて閉め出される事もしばしば。いざさらば_a0181097_16144428.jpg










◯◯◯を◯◯◯◯◯にされたうえに◯に×××されたりして、とても四十間際の方々とは思えな、、、いや、最近は皆、年輪も重ね個々にそれぞれの人生に背負った想いなど噛み締めつつ訪れた神社でさい銭を投入れてみたり、おのおのニクラシイ嫁の悪口かわいい子供たちの成長報告をしあったりとても有意義な二日間となる。
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そんな事であるから「男」たちは風呂も入って夜ともなるとへろへろで宴会場はお通夜のような静けさとなる。「男だらけ」であるから宴会にコンパニオンなどは呼ばず、隣の宴会場(こちらはキレイなコンパニオン付き)から聞こえるどこぞの慰安旅行集団のおじさんの「赤ら顔」声のカラオケを襖ごしに聴きながら静まり返った宴会場で「ふふっ」などと鼻で苦笑しつつ「ったく、、下品なおやじめ・・」「今年もいい旅行だよなぁ!」「そうだなぁ!」なんて言いながら遠い目でビールを継ぎ合ったりする訳である。いざさらば_a0181097_1619677.jpg















日本全国を飛び回り、大陸をまたにかけ、日夜この停滞ムードを頼もしい限りに躍動するお父さんもいれば、日々の生活にやつれ果てこのまま家には戻らないのではないかと思われるお父さんや、はたまたこの旅行が終わってしまうと後は何も人生の目的が無くなってしまって残りの日々は海や山に己の尊厳を見いだしてしまう困った人がいたりしてなかなか興味深い。

そんな中に一人、今回の幹事役を最後にこの旅行は暫くはお休み、という男がいて今まで十年無欠席、この春先から日本を離れる男がいる。
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そんな男を幹事にしてしまって僕たちは楽しんでしまう所がいかにもこの旅行らしいのだが、なんでも彼はアジアのある国へ赴任する事が決まったのだと言う。
その話を初めて聞いたのは去年の夏の終わり、都内にある百貨店の屋上ビアガーデンに集まった時だった。いざさらば_a0181097_16474684.jpg















彼には以前にも海外赴任の話があったのだが今回、その国の首都にある何もない田舎の野原の中に彼の会社の工場を一から造りそこの工場長として役目を担う事になったのだった。
当然僕には彼の会社の事はよく判らないが、小柄のかわいい奥さんと二人、五年は戻ってこないらしい。
こういう時の彼は割と無表情でそれが彼にとって嬉しい事なのか億劫な事なのか、出会った時からあまり変わらない淡々とした喋り方で打ち明けた。
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現地で従業員を集め育成をはかるという事なので、彼にとってはまさに全てを一から造り上げてゆく重大な任務を仰せつかったのだった。
妻を持ちながら日本を離れ五年もの間責任ある大役を引き受ける決心をする為にどれだけ時間を要したのか、とても興味があって単刀直入に聞いた。

断れば誰かが行く事になる。そいつが5年経って戻って来た時に俺はそいつに一生頭が上がらない。それを考えたからその日の夜には決めていた。
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彼の奥さんのお腹には新しい小さな命の息吹が宿っている。
彼が日本を離れるこの同じ春先にきっと元気な産声をあげるだろう。
遠い異国でもう一つ大切な事を彼は始める。
# by meke1008 | 2011-03-04 18:36

老人がくれたもの(後編)

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目的の病院はすぐに見つかった。老人を降ろす前に、さっき預かっていた診察券を持って僕は停車させた車から飛び出して車道を横切った。

幅の広い階段を大股で走り上がると入り口の自動ドアはすぐに開いた。受付で診察券を見せて老人の予約の有無の確認をとると受付の看護婦は、老人は確かにこの病院の患者で本日診察を受ける事になっている、と言う。老人がくれたもの(後編)_a0181097_1862266.jpg











どうやら診察予定時間はだいぶ過ぎていて、病院スタッフは遠方から来るこの老人の安否に気をもんでいたらしい。

すぐさま車に戻り老人の座っている助手席のドアを開けた。声をかけながら手を取って降ろそうとすると、老人は何やらその手の中に握ったちらし広告のような小さな紙切れを僕に渡そうとした。
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一瞬、何か連絡先のようなものでも書いてあるのかと思ったが、それにお金が包まれている事を僕は瞬時に理解した。

ほんのタクシー代の代わりです。と、小さく老いた声で老人は言った。

突発的に飛び込んできた役目が終わり、肝心の取材先へ車を走らせる事に頭がいっていた僕は老人の短時間の間の、意外な程に素早い気遣いに困惑したが一度断りを入れつつも素直に受け取る事にした。


あの後、急いで車を走らせて、はたして僕は定刻までに取材先に辿り着けたのか。何を撮影したか。
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これらその後の記憶が全く頭から跳んでしまっていて、あの病院近辺へ何か撮影で訪れた印象と一緒になっているのだが、それは多分思い違いだ。

折り目をつけて、小さく手でちぎられた白いちらし広告の包みの中には千円札が一枚、四つ折りにして入れられていた。
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わずかな時間、僕が離れた間に用意されたその無造作な包みは、昔の人の事だからひょっとすると何かの時のためにあらかじめその状態で財布の何処かにしまわれていたものだったのかもしれないと最近になって考える事もあるが、あのあまりにも不均一な折り方は、やはりきっと机もないような所で慌てて折りこまれたものに違いないだろう。

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いずれにせよその時の包みはここ九年ほどの間、お守りのつもりで僕のスケジュール帳のポケットにそのまま大切にしまってある。
# by meke1008 | 2011-02-11 23:02

老人がくれたもの(前編)

トン、トン、と不意に助手席側の窓を叩かれたので、一件目の撮影が終って次の取材先に向かうため車を道に寄せひとり地図を見入っていた僕は驚いてしまった。
やや後ろ目に左に振向くと、そこには八十歳前後とおぼしき老人が車内を覗き込む様に立っていた。その目はじっと僕を見つめていた。
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人通りも殆どなく声をかけられる理由が全く見当たらなかった僕は怪訝な調子で、なんですか?と、パワーウィンドウが下りきったところで訪ねた。老人は少し聞き取りづらい老いた喋り方だった。老人がくれたもの(前編)_a0181097_1705017.jpg












最初事態がよく飲み込めなかったが話を聞いているうちに、どうやら検診に行かねばならない病院への道中で道に迷ったらしい事が判ってきた。
その最寄りの駅から数分で到着するものを勘違いをして延々反対方向に歩いてきて迷い込んだようだ。老人がくれたもの(前編)_a0181097_17233249.jpg























この急な坂道の多いところからその病院のある街までは若者であればさほど遠くはなかったが、この老人の様子では恐らく相当な体力を浪費して時間もかかる事は容易に想像できた。また、いつ道に迷い込むとも限らない。

道を尋ねられただけだったが正直、参ったな。と、思った。
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その日二件目の撮影場所へまさに向かおうと思っていたタイミングだったし、老人の話を聞いているうちにも一刻一刻入り時間が迫ってくる。躊躇しながら時計に目を向けつつも心の中で呟いていた。
俺が送って行くしかないじゃないか・・・。

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何処かで少しでも迷ったり渋滞にでも遭遇したら完全アウトだと思った。そうでなくても道にうとい僕の事、とっさに適切な道順を選択出来るかどうかもとても怪しかったがとりあえず老人を助手席に乗せてそこで診察券を見せてもらった。
そこに記された住所を確認し、もともと僕が下ってきた長い坂道を切り返して逆戻りに車を急発進させた。

車中で少し話しをしたがやがてスタートとなる撮影時間や取材先の事が気になっておそらく僕は上の空だったろう。
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話をする老人の横顔にあまり表情はなかった。
                     〈つづく〉
                    
# by meke1008 | 2011-01-28 20:39

十年

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十年一昔、と言うけれど早いもので僕もこの仕事を始めて、まる十年が経ってしまった。

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これだけ目まぐるしい時代になると「三年一昔」くらいに表現した方がいいのではないかとも思うが、とりあえず一区切りつけて新たな十年が始まる事になった。
月日ばかり経ってしまっていっこうに中身が向上する気配なし、というのが悲しいところだがそこはもう暫く様子見という事にしておこう。
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十年先の自分の姿を見据えて仕事をしろ。
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と、時々言われてきた筈だがその言葉が届いていたのはどうやら耳までで、頭の中まではその音声信号は変換されなかったようだ。
パラレルワールド(現実とは別のもうひとつの平行して存在する世界)をあまり信じていないが、あるのだったらぜひ覗いてみたいと思う。そこで自分はどんな十年を送ってきたのか。十年_a0181097_1951942.jpg





















なんとも体たらくであるから、多くの人に支えられているこちらの世界の方がまだマシにやれているのかもしれない。そもそもまっとうに存在しているのかすらよく分からないけれど。

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年が明けてさざ波のように穏やかな街とは裏腹に、毎年毎年相も変わらず気忙しい新年を迎えている訳だが、次の十年後どんなふうな年が明けているのか。
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その頃には、いいかげん僕もいい歳だ。
# by meke1008 | 2011-01-07 22:25